Nature News No.4

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☆                                  ★

★        Nature News No.9 (1999/04/07発行)        ☆

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇CONTENTS(目次)◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

◇ ■はじめに                            ◇

◇ ■ひとりごと:桜の季節                      ◇

◇ ■イベント紹介                          ◇

◇ ■番組紹介:青森 岩木山麓アリの巣で育つチョウ ゴマシジミ    ◇

◇ ■新連載 パンパの鳥たち(1) 高木一夫               ◇

◇ ■雑記蝶 (9):アブラナと春のチョウ                ◇

◇ ■書籍紹介                            ◇

◇ ■施設紹介:白山恐竜パーク白峰                  ◇

◇ ■くりえいとPEN:更新情報                   ◇

◇ ■お知らせ                            ◇

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



●Nature Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』で発行さ

 れているメールマガジンに読者登録された方へ送付されます。

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■はじめに

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○Nature News は、読者のみなさんから寄せられたネーチャー関連の情報をお届

けする電子メールマガジンです。 (^^)/



○動物・鳥・昆虫・植物・花などの季節の情報、ネーチャー関連の本やホームペ

ージなどの紹介などのほか、エッセイなども掲載します。



○皆さまからの、情報提供、ご投稿をお待ちしています。

           ・・・なければ、自分で書くだけです。。ハイ (^_^;



○掲載は無料ですが、内容によってはご希望に添えない場合もありますので、予

めご了承ください。 m(__)m



○なお、お寄せ頂いた情報等は、くりえいとPENのホームページ

   http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/ 等で

紹介させていただく場合があります。



○バックナンバーは、次のHPでご覧になれます。

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■ひとりごと

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○桜の季節

 ここ数年、桜の季節になるとあちこちに桜の撮影に出かけています。今年は

3月末に九州へ行くつもりでしたが、天候が不安定だったのと、私の体調があ

まりよくなかったので、残念ながら中止しましたが、伊豆や姫路では撮影し、

これからまだ近畿や信州、東北などへ出かけて撮影する予定です。

 山地の桜ももちろん撮影対象になりますが、どの桜も多かれ少なかれ人手が

入っていますので、そんなことはあまり気にせず、堤防や公園、観光地になど

に植えられたソメイヨシノも、もちろん撮影して歩きます。

 桜の花だけを撮るのであれば、どこの桜もそれなりに綺麗ですから、撮り方

さえ間違えなければ、よい写真を撮ることができます。でもそういう写真ばか

りだと面白くありませんから、まわりの風景を入れたり、あるいは桜吹雪が舞

う情景を撮りたいわけです。もちろん、有名な桜の名所へ行けばそれなりの写

真は撮れるのですが、よい桜の木はどこにでもありますので、車で移動しなが

ら良さそうな桜の木を探して歩くことが多くなります。

 で、そういうときに困るのが、電線(電話線)と電柱、それに飾り付け用の

提灯や灯籠です。電線や電柱は現代の生活のためには不可欠なもので、どけて

くれというわけにもいかないのですが、桜を観光の売りにしているような場所

では、なんとかして欲しいといつも思ってしまいます。また、花見というとす

ぐに宴会、夜桜見物をしたいと考える風潮があるせいか、花見の名所になって

いる所(名所にしようとしている所)には、必ずといっていいほど提灯や灯籠

が飾り付けられていますが、私には美的感覚が欠如しているとしか思えません。

 今年のゴールデンウィークは、北東北へ行くつもりで、久しぶりに弘前城の

桜も撮影して来ようと思っていますが、あそこも例によって宴会場と化すので

気持ちよく撮影ができるか、ちょっと心配しています。ちょうどヒメギフチョ

ウも出ている頃なので、桜とチョウと。。。どちらに行くか、悩ましい旅行に

なりそうです。



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■イベント紹介

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○ネーチャーフォト四人展「詩季彩譜 その五 四つの終楽章」

               (桑田 明・児島祥浩・玉川長雄・畑野道明)

 日 時:1999年4月1日〜4月15日 平日 10:00〜21:00

      (土曜日は17:00まで。最終日16:00まで。日曜日は休み)

 会 場:大阪府立文化情報センター内 文情アートフォーラム

      大阪市北区中之島3-2-18 住友中之島ビル5F (朝日新聞社西側)

 

○「美しき熱帯の蝶たち展」

 日 時:1999年3月20日〜4月18日 10:00〜20:30(入場は20:00まで)

 会 場:東京池袋 サンシャイン60展望台(TEL 03-3989-3457)



○干潟を守る日in信州

 日 時:1999年4月14日(水) 18:30より

 会 場:長野県松本勤労者福祉センター

 問合せ:0263-36-5251(昼)・担当:長坂

 詳細情報は >>>http://member.nifty.ne.jp/aviator/wens/99higata.htm



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■番組紹介

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○生き物地球紀行:青森 岩木山麓アリの巣で育つチョウ ゴマシジミ

 放映日時:1999年4月12日(月) 20:00〜

 アリの巣の中でアリの幼虫を食べて育つゴマシジミというシジミチョウの姿を

 青森県岩木山麓でおった番組です。野外でゴマシジミの幼虫を探し出すのは大

 変なことで、なかなか見られるものではありません。是非ごらん下さい。また、

 ゴマシジミも最近衰亡が著しいチョウの1種で、青森県下の産地もその例外で

 はありません。この番組がそういう意味での貴重な映像にならないことを祈る

 ばかりです。なお、詳しくはNHKの番組予告をご覧ください。

                 >>>http://www.nhk.or.jp/sci/ikimono



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■パンパの鳥たち (1)            高木 一夫(Takazu@aol.com)

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▽パンパの鳥たち

 牛や羊の遊ぶ南米の広大なパンパにはどんな鳥が生活しているのか? バード

ウオッチャーなら誰でもその夢を一度はかなえたいと思っているに違いない。し

かし、南アメリカ南部のパンパに生息する鳥の情報は非常に少ない。ラ・プラタ

のデルタ地帯をのぞけば、この地方は植生が単純で、餌になる植物の種子も小さ

く、昆虫も少ない。従って小鳥類の密度は低く、目を引くような種類も少ない。

現在、南米南部地域は経済的、文化的に活動が停滞している時期で、鳥に対する

関心が低い。しかし、明らかに四季があり、季節による植物の変化(落葉植物も

多い)鳥の渡り現象等も顕著に見られる。

 歴史的にこの地の鳥類について、初めて詳しい記録を残したのはドン・フェリ

ックス・アザラ(1746〜1811)であった。彼はスペインの博物学者であり、1780

年南アメリカに赴いて、スペインとポルトガルとの間の紛争となった領土の境界

を測量し、20年間滞留した。その間ブエノスアイレスとパラグアイとの地図を作

り、博物学を研究した。1802年、 "パラグアイとラプラタの獣類、爬虫類及び鳥

類の観察" などを著した。

 1832年には有名なダーウインがビーグル号に乗ってこの地を訪れ、 2年間調査

を行った。鳥類についても科学者らしい詳細な記録を残している。しかし、パン

パでの調査が主として冬期( 7月)から春期(11月)であったため、調査の対象

からはずれた鳥も多く、特に盛夏ならどこにでも見られる水辺の小型の鳥類につ

いて全く触れられていない(ビーグル号航海記、種の起源)。そしてガラパゴス

島の鳥類に関する考察が余りにも有名になり、今までダーウインの言及したパン

パの鳥について取り上げられる機会が少なかったのは残念である。

 次にパンパの動物を世界的に有名にしたのはウィリアム・ヘンリイ・ハドソン

である。彼は100年以前に名著 "ラプラタの博物学者" ・ "遥かなる国遠い昔"・

 "ラプラタの鳥類" を著した。彼はダーウインの "種の起源" や "ビーグル号航

海記" のパンパに関する考察を引用しながら批判も加えている。そしてラ・プラ

タ河畔の特徴のある大型の鳥や、すばらしい小鳥の生活を生き生きと文学的に表

現した。

 今、人口の都市集中・熱帯雨林の減少・砂漠化の進行など、人類による自然

(生物の多様性)破壊があらゆる地域から報告されている。すでに 100年前、ハ

ドソン達は人類の活動が自然に大きな影響を与え、北米、ニュージーランド、オ

ーストラリア、そして特にアルゼンチンのパンパで貴重な生物種を消滅させてい

ることを警告していた。ダーウインが上陸して鳥類の調査をしてから約 160年経

った今、この地と、そこで生活する鳥たちはどのように変わったのだろうか。ま

たハドソンの生活したブエノスアイレス近郊のキルメスとパンパの鳥はどの様に

なったのだろうか。

 最近我が国では南米の小動物全般を扱った森氏の"知られざる南国の動物たち"

が出版され、その中でパンパの鳥類のいくつかが興味深く紹介されている。1997

年には NHKのテレビでも "アマゾンカッコウの謎" と題してパンパの美しい小鳥

の映像が本格的に紹介され、一般の人にも関心が深まってきた。

 著者は1988年3月から1990年の9月まで2年7ヶ月間、ウルグアイのモンテビデオ

に滞在し、その間ウルグアイのほとんどの地域でパードウオッチングを楽しみ、

撮影できるものはビデオに収めた。ウルグアイの小鳥の特徴は人の動きに対する

警戒心が少ないことである。日本では小鳥のビデオによる撮影はなかなか難しい

が、ここでは比較的簡単であった。またブラジルではイグアス滝、ブルメナウの

自然公園、フロリアノポリス、ラグーナを、アルゼンチンではフフイ、サルタ、

チグレのデルタ地帯、森林湖沼地帯のバリローチェ、チリではアンデス山脈の峠

にあるポルデージョ、バルパライソ、パプード等の海岸地帯、農業地帯のロスア

ンデス、キヨタ、さらに内陸部のイリャペル、サラマンカなどを訪れた。自然に

ダーウインの訪れた後を追う形となり、その比較に関心が湧いた。この小文を書

いた一つの理由である。



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                 年   表

     ---------------------------------------------------------------

      1500年    植民開始

      1802年    アザラの著作完成

      1832年    ダーウインのビーグル号による調査

      1890年    ハドソンの滞在と著作

      1990年    私のウルグアイでのバードウオッチング

     ---------------------------------------------------------------



▽過去と現在

 ダーウインが最初に訪れたウルグアイの丘陵地帯のマルドナードから目を向け

よう。ダーウインは

  "町は 1マイル(1,500m)ほどの幅の、小さな砂丘の帯で河から隔てられてい

  る。他の側面はすべて広々とした、わずかに起伏する土地に囲まれ、見事な

  緑の芝生が、一面に生えそろっており、無数の牛、羊、馬の群がこれを食べ

  ている。耕された土地は町のすぐ近くでさえ極めて少ない。ここでは花崗岩

  の丘がやや厳めしい。風景が目を楽しませることはない。" 

と記述している。現在ここには南米随一とされるリゾート都市プンタ・デル・エ

ステが作られ、夏期には 100万人を越す人々でにぎわう。ここに連なる東部海岸

には別荘地が散在する。しかし背後の草原は牧畜に利用されており、 160年前と

大きな差はない。

 次に訪れたミナス市については、

  "この辺はむしろ丘が多いが、その他の点以外ではではウルグアイの他の地方

  と少しも変わったところはない。パンパの住人はおそらくこの丘を高山と思

  っているであろう。町はマルドナドよりもさらに小さな平原にあって、低い

  岩山に取り囲まれている。村の形はどこにも見られる対称型で漆喰塗りの教

  会堂が中心にあり、見かけはむしろ美しい。村はずれの家は平原からはみ出

  ていて、庭も中庭もなく孤独そのもののようであった。" 

と結んでいる。ミナス市は 160年前ダーウインが記録した時は人口数百人であっ

たが、現在は 3万人近くを越す県都となっている。しかし、街と教会を含めて、

人家と平原の接点はほとんど変わっていない。変化といえば、ユーカリの植林が

導入され、あちこちに見られること、大型トラクター耕運による馬鈴薯、麦、米

などの栽培が国道に沿って行われているぐらいである。相変わらず全面が放牧地

なのである。 

 ヨーロッパ人が入植を開始した1500年代からウルグアイの自然がどんなに変わ

ったか、詳しい記録は今ではほとんど残っていない。しかし、入植前の植生や動

物の分布がどのようなものであったにしろ、現在の生態系にまで変化をもたらし

た最も重要な要因が牛・羊の放牧であることに間違いはない。ダーウインが訪れ

た1832年はすでに入植から 300年近く経過し、ほとんど全土が牧場化して、自然

破壊の極相となっていた。このことはダーウインも意識していた様子がうかがえ

る。ライエル氏の言葉から次のように引用している。

  "1535年にラプラタの最初の移住民が72頭の馬をつれて上陸して以来、これほ

  ど著しく変貌した国はおそらくあるまい。馬、牛、羊など無数の群が、植物

  の全景観を変えたばかりでなく、グワナコ、シカ、ダチョウなどをほとんど

  駆逐してしまった。その他の変化も同じように無数に起こったに相違ない。"

と言っている。植生におよぼす家畜の影響についてダーウインの直接の記述では

  "モンテビデオ付近と、人口の少ないコロニアの草原とでは甚だしい違いが見

  られるが、これはすべて家畜の糞による肥料のためであり、また家畜が草を

  食うためによる。北アメリカの草原でも同じ事実が観察されている。5〜6フ

  ィートもある禾本科の植物が牛に食われると普通の牧場に変わってしまう。"

と述べ、アザラもこれに類した変化を見て驚嘆して次のように述べている。

  "新しく建てた小屋に至る道の両側に、それまでこの付近に存在しなかった植

  物が新たに現れることについて、野馬が道をえり好みして道ばたに糞をする

  癖があり、近くに堆積している。こうして豊かに施肥された土地の線が広漠

  とした地域を貫く交通の道となっている。" 

という説明である。これに関連して、世界中ほとんどの地域では動物の糞を処理

する糞虫(フンコロガシ)がいて、牛や羊の糞を数時間のうちに土の中へ埋め込

んで、自分の幼虫の餌にするのが普通である。この国には膨大な牛・羊がいるに

も拘わらず、この糞虫に該当するものがいない。従って、家畜の糞は、雨の少な

い時期には円盤のように固まって草地のあちこちに散在することになる。雨期に

なると溶けて土に還元される。ボリビアの高地などでは貴重な燃料になるそうだ

が、ウルグアイでは無視されている。残念なことにこの糞に興味を示す鳥も見た

ことはない。



                             <次号へ続く>



        ★★★★★ 写真を見たい方へ ★★★★★

         

この連載記事には写真がありますが、Nature News に添付するとファイルが大き

くなってしまいますので、添付はしていません。写真をご覧になりたい方は、次

のいずれかの方法を選択してご覧ください。



 1) ホームページを閲覧する

  Nature News に掲載された連載記事(読み物)一部は、タイトル毎にまとめ

  てWeb版を作製し、ホームページとして閲覧できるようにしていきます。Web

  版では、必要に応じて画像を見たり、音声も聞けるようにする予定です。

  ただし、 Web版が閲覧可能になるのはNature Newsの発行より後になります。

  とりあえず、「パンパの鳥たち」と「雑記蝶」のWeb版を作製する予定です。

  詳しくは次のページでご案内しますので、ここからリンクをたどってくださ

  い。       >>>http://japan-inter.net/nature-news/index.htm

  なお、「パンパの鳥たち」のWeb版は今週中に公開予定です。



 2) 画像ファイルを電子メールで受け取る

  希望者には画像ファイルを電子メールで、添付ファイルとして配信します。

  この場合、『まぐまぐ』での申込みはできませんので、

     nature-news@japan-inter.net

  宛てに、subject を「画像配信希望」としてメールを書いて申し込んでくだ

  さい。その際、バックナンバー分の画像も必要な方は、何号から必要かもお

  書きください。ただし、特定の記事の画像だけを配信することはできません

  ので予めご了承下さい。なお、配信する画像の著作権は作者(または撮影者

  等)にありますので、許可なく二次使用することはできません。

  また、画像の配信を中止される場合は、上記のアドレス宛てにsubject を

  「画像配信中止希望」としたメールをお送りください。



 3) 画像ファイルを郵送で受け取る

  何らかの理由で1または2の方法が使えない場合は、画像ファイルを郵送する

  こともできます。ただし、この場合は若干の費用負担をお願いします。費用

  は当面フロッピーデイスク1枚につき、\1,000(送料、税込み)とさせてい

  ただきます。詳しくは

     nature-news@japan-inter.net

  まで、メールでお問い合せください。



ちなみに、今回掲載した原稿には次の6点の画像があります。

 パンパの鳥たち

  牧場 牧場の中にある森林はほとんどの場合が植林したユーカリである。

  牧童 放牧によって育てた牛を市場に売りにゆくのは今でも牧童の仕事であ

     る

 過去と現在

 プンタデルエステ  海岸砂丘の上に作られたビル群はすべてリゾートマンシ

           ョン

 プンタデルエステ2 ヨットハバーは世界一周競技会の寄港地の一つである

 ミナス       山頂から見るミナスの町

 ミナス2      町はずれと牧場の境界はダーウインの見たまま



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■雑記蝶 (9)                         藤井 恒

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○アブラナと春のチョウ

 アブラナ科の植物には、キャベツ(ブロッコリー、カリフラワー)、ダイコン、

ハクサイ、カブ、アブラナ、カラシナなどの栽培種のほか、ナズナ(ペンペング

サ)、タネツケバナ、コンロンソウ、イヌガラシ、ハタザオなどの雑草もたくさ

んありますが、これらの大部分は長日性の二年生(越年生)草本で、自然状態で

は春に開花・結実し、その後、枯れてしまうものがほとんどです。

 ちょうど今の時期は、多くのアブラナ科の植物が花を咲かせていますが、そう

いう場所は、また多くの昆虫の生活の場ともなっています。

 関東以西の河川敷で黄色い花を一面に咲かせ、美しい絨毯を作っているのはた

いていはセイヨウカラシナですが(これをナノハナ=アブラナだと思っている人

が多いですけれど)、こういう場所に行ってみると、必ずといっていいほどモン

シロチョウが飛びまわっていますし、場所によってはスジグロシロチョウの姿を

見ることもできます。また、発生は少し遅れますが、ツマキチョウというモンシ

ロチョウより少し小型の愛らしいシロチョウの姿を見ることもできます。

 東京近郊には、しばしばオオアラセイトウ(ムラサキハナダイコン)が植えら

れていて(関西ではあまり多くありませんが)、山手線や中央線の沿線などに紫

色の絨毯を作っていますが、こういう場所にもスジグロシロチョウなどが飛んで

います。

 一方、例えば京都郊外などの山間の谷に面した道路沿いなどには、もう少しす

るとハクサンハタザオが白い絨毯を作るようになります。ここには、エゾスジグ

ロシロチョウやツマキチョウなどが飛ぶ姿が見られるようになります。山間の清

流が流れる谷に作られたワサビ田のワサビも白い花を咲かせていますが、ここに

はスジグロシロチョウが飛びまわっています。

 さらに、山間部や北日本の谷筋などでは、しばらくするとコンロンソウなどが

一面に白い花を咲かせるようになりますが、ここでもスジグロシロチョウ(主に

西日本)やエゾスジグロシロチョウ(主に東北北部・北海道)などの姿をたくさ

ん見ることできるようになります。

 このように、モンシロチョウやスジグロシロチョウなどがアブラナ科植物のそ

ばでたくさん見られるのは、幼虫がこれらの植物を食べて育つということもあり

ますが、アブラナ科植物の花はまた成虫の蜜源ともなっています。チョウは花粉

の媒介者としてはそれほど重要ではないという話もありますが、アブラナ科の花

粉はモンシロチョウなども媒介しているでしょう。そういう意味では、アブラナ

科植物とこれらのチョウは相利共生に近い関係にあり、共進化して来たと言える

でしょう。

 ところで、上の文を読んで、なぜ同じアブラナ科なのに花の種類によって見ら

れるチョウの種類が違っていることがあるのか、疑問に思った方もおられるかも

しれません。これは、同じアブラナ科でも、チョウによって好みというか利用頻

度(特に幼虫の食草としての利用頻度)が異なっているからです。特に、西日本

におけるエゾスジグロシロチョウとハクサンハタザオなどとの関係は密接で、エ

ゾスジグロシロチョウを見たかったらハクサンハタザオの群落を探した方が早い

くらいです。

 また、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、エゾスジグロシロチョウと(対

馬に分布する)タイワンモンシロチョウ、オオモンシロチョウ(最近、北海道と

青森県に侵入した)は、春から秋にかけて数回世代を繰り返しますが、アブラナ

科の植物が減少する夏の暖地では、チョウの個体数も少なくなることが知られて

います。ツマキチョウの幼虫もアブラナ科を利用しますが、これは年1回、春に

だけ見られるチョウです。蛹で越冬するのはモンシロチョウなどと同じですが、

春に羽化した成虫はタネツケバナなどの花茎などに卵を産み付けます。孵化した

幼虫は主に花蕾や果実などを食べて成長し、まもなく蛹になるとそのまま春まで

休眠するのです。本州中部地方のやや標高の高い山地には、クモマツマキチョウ

も分布していますが、これもツマキチョウと同じような生活史をもっています。

ツマキチョウやクモマツマキチョウが春にだけ活動するのは、幼虫の食草であり、

また成虫の蜜源ともなるアブラナ科植物の生活史と無関係ではないでしょう。

 このように、モンシロチョウやその近縁種はアブラナ科植物と共に進化してき

たとチョウだと思われますが、ナズナのようにほとんど利用されないアブラナ科

植物もあったりして、研究対象としては非常に面白いグループなのです。



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■書籍紹介(新刊以外)

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○Paul W. Sherman and John Alcock ed., 1997

 Exploring animal behavior: readings from American Scientist, 2nd. ed.

 Sinauer Associates, Inc., Massachusetts, U.S.A.

 ISBN 0-87893-766-8 (paper)

 300pp. 日本で購入すると\4,000ほど

 American Scientistに掲載された記事をまとめた本です。全体は5つのパート

 (Doing science, The mechanisms of behavior, The evolutionary history 

 of behavior, The adaptive value of reproductive behavior, The adaptive

 value of social behavior)に大別され、全部で30の記事が掲載されています。

 登場する動物は、昆虫、クモ、魚、鳥、哺乳類(ネズミ、コウモリ、サル、ヒ

 ト)などいろいろで、動物の行動についての面白そうな話をつまみ食いしたい

 人にお勧めできます。



○島根県環境生活部景観自然課(編),1997

 しまねレッドデータブック −島根県の保護上重要な野生動植物−(動物編)

 島根県環境生活部景観自然課発行

 417pp. \2,500

 島根県のレッドデータブック。選定種が1種ずつ分布図やカラー写真と共に紹

 介されています。緊急保護種として、ホンドモモンガ・ニホンヤマネ・ニホン

 ツキノワグマ(以上哺乳類)・ハチクマ・クマタカ・ハヤブサ・カラスバト

 (以上鳥類)・ルーミスシジミ・オオウラギンヒョウモン・ヒョウモンモドキ

 (以上昆虫類)があげられているほか、要保護種60種、要注意種 121種が選定

 されています。これは、よくできた本でもあると思います。

 なお、本書はTTS昆虫図書などで購入できますが、在庫が少なくなっている

 ようなので、入手を希望される方はお早めに。



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■施設紹介

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○白山恐竜パーク白峰

 所在地:石川県石川郡白峰村字桑島4-99-1

      TEL 07619-8-2724

 入館料:大人(高校生以上)800円 小人(小・中学生)400円

     * 団体は20名以上で1割引

     * 化石発見広場で化石の採集をする場合は大人1,000円、小人500円

 開 館:9:00〜17:00(入館は16:30まで)

 休館日:毎週木曜日(ただし、夏休み期間を除く。木曜日が祝日のときはその

     翌日、冬期間は休館)

 この辺りはたくさんの恐竜の化石が見つかっている所です。白山恐竜パーク白

 峰は国道 157号線沿い、手取ダムの近くにあります。日曜日にそばを通ったつ

 いでに立ち寄ってみましたが、結構よかったので紹介します。

 恐竜館、ふるさと映像館、ふれあい館、化石工房、化石発見広場、自然体験広

 場などがあり、展示もなかなか工夫されてよくできていました。追加料金を払

 うと化石発見広場で石を割って化石を探すことができます。石は結構硬いです

 が、植物の葉の化石などが見つかります。見つけた化石は1人1個持ち帰るこ

 とができ、よい思い出になるでしょう。

 ただ売店はもう少し工夫するといいかな。。。と思いました。



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■くりえいとPEN:更新情報

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○くりえいとPEN http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/

 チョウや昆虫、写真などの総合情報ページです。



○季節の花情報 http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/season-hana100.htm

 京都のお勧め花スポット公開中。



○お勧めの本のページ http://japan-inter.net/book/

 Nature Newsで紹介した本を中心に、★★★以上の本を紹介します。



○ホームページの設置サービスを始めました。無料サービスもあります。

                http://japan-inter.net/information000.htm



○子ども向けの質問コーナー「質問ひろば」  http://japan-inter.net/kids/

 ネーチャー関連の質問ができます。大人も利用できますよ。



           >>>>>>>>>>>>見・に・来・て・ね  (^^)/



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■お知らせ

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○情報提供・ご投稿をお待ちしています。

 Nature News では、読者のみなさまからの情報提供やご投稿をお待ちしていま

す。ネイチャー関連の情報なら何でもOK・・・季節の生き物情報や新刊・CD

・パソコンソフト・ビデオの情報(宣伝)、素敵なネーチャー関連グッズの紹介

(宣伝)、ネーチャー関連のホームページの紹介(宣伝)、自然や環境について

のご意見など、何でもお寄せ下さい。

 なお、写真(画像)や音声も紹介されたい場合は、ホームページの方でご紹介

することも可能です。

 ただし、営業行為に該当するものは、ホームページへの掲載が有料となる場合

もありますので、ご相談ください。



○Nature News に掲載されている情報のご利用は、利用者の責任でお願いします。

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■編集後記

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○関東以西の平地の桜はどこも満開となり、今週中には散ってしまいそうな雰囲

 気ですが、北日本などの寒冷地ではむしろ例年より開花が遅れそうな感じです。

 青森などでは、まだ雪がちらついたりしているそうで、弘前城の桜も久しぶり

 にゴールデンウィークの頃に見頃になりそうだということです。



○ギフチョウもあちらこちらで出始めているようですが、思ったほど発生が早か

 ったわけではなさそうです。私も日曜日(4月4日)に今年はじめてのギフチョ

 ウを石川県小松市で目撃しました。



○今週から「パンパの鳥たち」の連載をして頂くことになった、高木一夫さんは

 農林水産省で害虫の研究をされていましたが、バードウオッチャーでもあるそ

 うです。連載をご覧になっての感想など、是非、お寄せください。

 

○昨日は寒冷前線の通過に伴って、京都でも春雷が鳴り響き、激しい雨と突風が

 吹き荒れましたが、桜は思ったほどは散らずに残っています。さて、今度の週

 末はどんな天気になることやら。。。



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= 電子メールマガジン Nature News No.9 (1999/04/07 発行)      =

= 発 行:くりえいとPEN http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/     =

= 編 集:藤井 恒(Hisashi FUJII)                  =

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