Nature News No.4
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★        Nature News No.10 (1999/04/14発行)        ☆

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇CONTENTS(目次)◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

◇ ■はじめに                            ◇

◇ ■ひとりごと:エリマキトカゲ                   ◇

◇ ■イベント紹介                          ◇

◇ ■新連載 パンパの鳥たち(2) 高木一夫              ◇

◇ ■雑記蝶 (10):消えゆく草原性のチョウたち            ◇

◇ ■新刊紹介                            ◇

◇ ■書籍紹介                            ◇

◇ ■くりえいとPEN:更新情報                   ◇

◇ ■お知らせ                            ◇

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



●Nature Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』で発行さ

 れているメールマガジンに読者登録された方へ送付されます。

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■はじめに

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○Nature News は、読者のみなさんから寄せられたネーチャー関連の情報をお届

けする電子メールマガジンです。 (^^)/



○動物・鳥・昆虫・植物・花などの季節の情報、ネーチャー関連の本やホームペ

ージなどの紹介などのほか、エッセイなども掲載します。



○皆さまからの、情報提供、ご投稿をお待ちしています。

           ・・・なければ、自分で書くだけです。。ハイ (^_^;



○掲載は無料ですが、内容によってはご希望に添えない場合もありますので、予

めご了承ください。 m(__)m



○なお、お寄せ頂いた情報等は、くりえいとPENのホームページ

   http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/ 等で

紹介させていただく場合があります。



○バックナンバーは、次のHPでご覧になれます。

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■ひとりごと

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○エリマキトカゲ

 最近、大阪のあるペットショップに立ち寄ったところ、大きな水槽の中に入っ

たエリマキトカゲが数頭、エリを垂らして売られていました。若い人はご存じな

いでしょうが、エリマキトカゲは「わくわく動物ランド」というTV番組で紹介

されて人気者となり、TVコマーシャルにも登場するなど一世を風靡したので、

「おお、懐かしい。。。」とつい見入ってしましました。

 結構なお値段でしたから、買い手が着くのかな。。とも思いましたが、エリマ

キトカゲを買ったものの、これを持て余して放してしまうことは多分ないと思い

ますが、一部で流行したグリーンイグアナとか、アリゲーターなどは逃がしてし

まう人もいるようで、動物にとっても、まわりの人間にとっても迷惑な話だと思

います。



 昨年、長野県の美ヶ原でアサギマダラの調査をしていたとき、林道脇から飛び

出して来た小動物と目が合って、「えっ、なんで?」と思ったことがあります。

その小動物がシマリスだったからです。ご存じのようにシマリスは日本では北海

道にしかいないハズです。でも、長野にいるということは、ペットとして飼われ

ていたシマリスが野生化したのかと思い、H氏に伺ったところ、美ヶ原では5年

ほど前から見られるようになったのだそうです。実は、アサギマダラを捕獲する

ための網(ネット)を持っていたので、このシマリスを捕まえようと思えば捕ま

えられたのですが、保護獣扱いになっているとまずいのでしばらく観察して、お

別れしました。(実際は、採集してしまってもよかったそうです)

 シマリスは確かに可愛いですが、でも、本来生息していなかった場所にシマリ

スを放すのがいいことだとは思えません。シマリスが加わったことで、影響を受

ける生物が必ずいる訳ですからね。

 西表島では野生化したイエネコ(いわゆる野良猫)がイリオモテヤマネコの生

息を脅かしているとか、奄美大島ではハブ退治のために放したマングースがアマ

ミノクロウサギを襲っているといった話をよく聞くようになりましたが、悪いの

はイエネコでもマングースでもないことだけはハッキリしています。

 そう、悪いのはそれを放した人間でしょう。



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■イベント紹介

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○「美しき熱帯の蝶たち展」

 日 時:1999年3月20日〜4月18日 10:00〜20:30(入場は20:00まで)

 会 場:東京池袋 サンシャイン60展望台(TEL 03-3989-3457)



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■パンパの鳥たち (2)                    高木一夫

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▽ウルグアイの植生

 ダーウインの見たウルグアイは全面的に大きな樹木がないことが特徴であった。

  "若干の岩山は所々藪で覆われ、大きな流れの岸、特にミナス市の北方では柳

  が稀ではない。タペス河の近くにシュロの林があることを聞いた。一般に樹

  に乏しいが、今述べた樹とスペイン人が植えたものが例外となっている。輸

  入された物ではポプラ、オリーブ、モモその他の果樹が数えられる。モモは

  非常に良く生育して、ブエノスアイレスの市では薪の主な材料となっている。

  パンパス地方のように、極端に平坦な土地は、樹木の生長に都合の良いこと

  は稀である。おそらく、南西の強風(バンペイロ)のためとも、排水関係に

  よるためとも考えられる。しかし、マルドナドの周囲の土地の性質にはそう

  した理由は成立しない。岩の多い山地が保護をされた状態にあって、種々の

  土壌があること、小流はどの谷底にも常にあり、粘土質の土は水分を保つに

  適している。森林帯の存在は一年中の湿気の量の多少で決定される。しかも、

  この地方は冬期に大雨が頻繁で、夏期は乾燥してはいても甚だしくはない。"

と述べている。ハドソンもパンパに大木がない理由について原因の解明に苦慮し

ている。彼は、1840年代にオーストラリアから導入したユーカリが旺盛に生育し、

牧場の牛の避難場所になったり、燃料として重宝されるようになったので、南西

の強風説は打ち消されたと考えた。私はモンテビデオ近郊のラスブルハスでユー

カリのひこ生えが一年間に4m成長するのを実際に測定した。

 もう一つの有力な説は旱魃である。ダーウインによると

  "1827〜1830年にわたってグラン・セコすなわち大旱魃と呼ばれた期間があっ

  た。そのときには雨がきわめて少なく、植物はアザミまでも枯れ、小川は干

  上がり、この地方一帯が埃りっぽい街道のような有様となった。おびただし

  い鳥、野獣、牛、馬の類が食料と水との不足のために死んだ。実見した者の

  話によると幾千の大群をなした牛がパラナ河に突入して溺れてしまったとい

  う。このような旱魃(セコ)はある程度まで周期的のものと思われる。他に

  数例の年代を聞かされたがその間隔は約15年である。"

と説明している。ウルグアイの農牧省に残されている記録では最近でも30年、60

年の周期で大旱魃(2〜3年間夏に雨が降らない)があった。乾燥のため植物は枯

れるが、火事による被害がさらに大きいことを挙げている。ユーカリの場合、葉

が堅く乾燥に強い。根が深くまで入っているので、地上部が火事で焼けてもほと

んどが再生し、旱魃や火事には強い。海岸保安林での火災現場で、松はすべて枯

死していたが、ユーカリは再生している様子が観察できた。滞在中の1989年も干

ばつ年で雨量は年間600mmで、多くの牛羊が処分されるのを実見した。



▽鳥類の生息環境

 ここでウルグアイの鳥類生息環境の大半を占める牧場を詳しく観察しよう。放

牧地はすべて鉄線と木製の牧柵(杭による高さ1.5m程度)で囲まれている。面積

が数 100haに及ぶものでも決して途切れるようなことはない。ウルグアイ全土ど

んな辺境や山(最高峰で500m以下)でもこの牧柵によって所有権が明示されてい

る。牧柵を作る専門の業者が、強力な牽引機で番線を杭に直接通して作るので、

大人が針金の間を広げて体を入れることは不可能である。南米では牧柵は神聖な

ものであり、住居の壁と同質で、無断で牧柵内に入ったものに対する攻撃は自衛

権の発動とみなされる。放牧地内にはシェルターになるユーカリの林(遠目には

島のように見える)、水飲み場を除けば一見人手がかかっていないようにみえる。

しかし良い放牧地として維持するためには、棘のあるアカシア類の除去やチョウ

センアザミ・パンパスグラス(ススキ)の進入を防ぐため常に注意していなけれ

ばならない。これらの植物は家畜の口周や鼻を傷つけ食欲を低下させる。ちなみ

にウルグアイでの適正放牧数は良質なもの1haあたり牛1頭、羊10頭で、低品質の

放牧地では1haあたり牛0.2頭とされている。このような放牧場は図に示したよう

な一般的環境を持ち、鳥類が住み着く独特の環境を作りあげている。

 牧場内での牛、羊の水飲み場所は3種類ある。第1は人間が掘った井戸から水を

ポンプや風車で汲み上げて、コンクリート製の水飲み桶に流し込むタイプである。

風車のある風景はアルゼンチンを含むパンパ一帯で見られるもので、単調な景色

を救ってくれる。現在も、頑丈で立派な風車を作るメーカーがあり、省エネ的な

施設でもある。

 第2はやや起伏のある低湿地にブルドーザーで堰堤を作り、雨が降った時の流

水を溜めるタイプの溜め池(タハマール)である。これがウルグアイの放牧場の

一つの特徴となっている。

 第3は常に流水のある河の利用で、牛や羊が水を飲めるように川岸の木を切り

払い水飲み場としたもので、かなり恵まれた特別の牧場である。自然の湿原状態

を利用している場所もあるが、東部海岸地帯の特殊な地区である。 

 ここで牧場の鳥の生活と最も関係の深いタハマールについてやや詳しく記録し

ておきたい。鳥は常に水を確保する必要があるので、牛・羊のためのタハマール

は小鳥達にとっても貴重な場所である。タハマールの下流部には、増水の時に水

を落とす水門がある。水門からは少量の水が常に出るので、じめじめとしており、

柳などの喬木が生えていて、ミソサザイ、ヒワなどの棲家となる。水門の両側は

上部が幅1mほどの土手となり、チョウセンアザミが特異的に繁茂する。水深はこ

の部分が一番深く、 1〜2m(底浚えをしてからの年月による)程度で、カワセミ

などが見られる。水深は上流になるに従って浅くなり、最上流部にはホテイアオ

イが見られる。50cm程度のところからはパピルスの群生が見られ、ムシクイ、バ

ン、クイナ、カイツブリ(ヌートリア等も)等の営巣場所を提供する。上流には

柳・栴檀などの、やや高い樹が雨水の流路に沿って並び、キバラタイランチョウ、

トビの類等が営巣する。水上にはバン、カモ、白鳥の類が常に遊泳し、小魚やカ

エル、リンゴスクミガイ、水草などの餌を首を突っ込んで探し、水辺にはナンベ

イタゲリ、セイタカシギ、サギ、トキ、レンカクなどが遊ぶバードウオッチング

の宝庫である。

 牧場(エスタンシア)の中での数少ない鳥の棲家のうち特筆しなければならな

いのは家と周辺の果樹園やバラ園を囲む人工的な生け垣(ヘッジロー)、道路か

ら門までの並木、燃料や防風樹にもなるユーカリや在来種のオンブーの林などの

存在である。これらの木々は数多くの鳥類の棲家となる。日中草原で餌を探した

鳥達のねぐらにもなる。夜明け前、まだ気温が低い時には不活発だが、朝日の上

昇とともに少しずつ動き、さえずりを始める様子を見ると、牧場の鳥の大半が集

合しているような状況を呈する。

 通常森林は鳥の生息地として最も適している。ウルグアイでは国によって保護

されているサンクチュアリと海岸防風林を除いては森林そのものがない。その一

つであるラグーナサウセは湖を囲む松とユーカリを主とした造林地である。もう

一箇所のラプラタ河岸のアンチョレナは世界各地から導入した樹木が栽培されて

いる植物園のようなもので、天然林は川岸近くのマングローブに近い植物のみで

ある。このような自然公園は大統領の別荘地を含むため、一般の人々の出入りは

制限されており、レンジャーの案内なしには入ることができず、観察の機会はな

かった。

 鳥類の生息地となるその他の環境としては海・湖(大規模湿地を伴う)がある。

海は大西洋に面して急に深度が増すため、魚・貝・海藻などは少なく、南極海か

らの冷水と相まって生物は多様性を持たず、海鳥の種類もマセランペンギン、ハ

サミアジサシ、ミヤコドリ、アホウドリなど興味深い鳥はいるが、特有なものは

いない。ラ・プラタ河は大河であるが、ウルグアイ側では鳥類から見れば海と変

わらない。アルゼンチン側には支流パラナ河の三角州をともなう大湿地帯があり、

300種以上の鳥類が生息する。

 湖としてはブラジル国境に琵琶湖の2倍ほどのメリン湖があり、多数の鳥類が

生息するとの噂は聞いたが、県都(メロー)から湖岸の村落まで一日一本のバス

しかなく、観察する機会はなかった。

 中央部の大河リオネグロには三ケ所にダムがあり、内水面を形成するが、ここ

は魚類も少なく、昆虫や植物も単純で、放牧地内を流れる川と本質的な差はない

ように思われた。

 大規模湿地帯は鳥類の宝庫であることはいうまでもない。アメリカコウノトリ、

クロトキ、ベニヘラサギ、クビワサケビドリ、サギ類、カモ類等の大型鳥類がコ

ロニーを作る。しかしウルグアイでは湿原も牧柵で囲まれた放牧地の一部である。

頭だけ水の上に出した牛の群が、歩いている光景は珍しくない。湿原における鳥

類の保護は国立公園とは別で、牧場の所有者であっても、湿原を勝手に排水して

農耕地にすることはできない。日本の企業が取得した広大な牧場の中にウルグア

イ有数の湿地帯が含まれていたため、その付近を大豆畑にしようとした企業の計

画は途中で中止せざるを得なかったというような話もある。



                             <次号へ続く>



         ★★★ 写真を見たい方へ ★★★

         

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■雑記蝶 (10)                        藤井 恒

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○消えゆく草原性のチョウたち

 近年、急激に姿を消しつつあるチョウがいます。もっとも衰亡が著しいのは、

ギフチョウでもなければ、高山チョウでもありません。少し前までは人里の近く

で比較的普通にみられた草原性のチョウたちです。

 今週の月曜日(4月12日)にNHKで放映された「生き物地球紀行:青森 岩木山

麓アリの巣で育つチョウ ゴマシジミ」をご覧になった方もおられると思います

が、ゴマシジミも近年衰亡しつつある草原性のチョウの一つです。全国的に見れ

ばすぐに絶滅を心配する必要はないかもしれませんが、地域個体群レベルでは絶

滅した場所がたくさんあり、青森県でも、以前の多産地で既に絶滅した場所や絶

滅が心配されている産地がかなり存在します。番組の舞台となった岩木山山麓と

て例外ではなく、ゴマシジミの姿を見るのは以前に比べて難しくなっています。

 この岩木山山麓や弘前市や青森市の低山地の草原には、かつてオオルリシジミ

というシジミチョウも多産していましたが、このチョウも1980年を迎える前に絶

滅してしまったと考えられています。オオルリシジミは、岩手県の盛岡市などに

も分布していましたが、東北のオオルリシジミはほぼ同じ頃絶滅してしたものと

考えられます。また、長野県や新潟県のオオルリシジミも1990年代に入ると急激

に衰亡し、ほとんどの産地では見られなくなってしまいました。そのような訳で

、現在もたくさんのオオルリシジミが見られるのは熊本県の阿蘇山山麓だけにな

ってしましました。

 オオウラギンヒョウモンというタテハチョウも、以前は青森県など、各地の草

原に広く分布する普通種でしたが、1980年代以降、急激に衰亡し、現在も確実に

見られる産地は、中国地方と九州のごく限られた産地だけになってしまいました。

私の住んでいる京都の木津川や、奈良の若草山なども多産地として有名でしたが、

今、その姿はどこにもありません。

 中国地方に分布するウスイロヒョウモンモドキや、中部地方と中国地方などに

分布するヒョウモンモドキというタテハチョウもまた、衰亡の著しいチョウです。

ウスイロヒョウモンモドキは、広島・島根両県ではほぼ絶滅し、現在は岡山・兵

庫両県の一部で見られるだけですし、ヒョウモンモドキは広島県下ではまだ確実

な生息地が残されているものの、ほかの地方では姿を見るのがかなり困難になっ

てきています。

 そのほか、ヒメヒカゲ、チャマダラセセリ、ミヤマシジミなど、衰亡が著しい

草原性のチョウが数多く存在します。



 もちろん、草原性のチョウの全てが衰亡している訳ではなく、例えばウスバシ

ロチョウ(アゲハチョウの仲間です)のように、近年、分布を拡大していると考

えられているチョウもいますが、人里周辺に生息する草原性のチョウの多くが衰

亡しているには、それなりの理由があると考えられます。その理由は、地域によ

り、種により違いはあるでしょうが、主に次のようなことが指摘されています。

 まず、人里に近い草原や湿原は開発により破壊されやすいことがあげられます。

こういう草原的環境は、農地や宅地、別荘地、ゴルフ場などとして開発されたり、

公園整備という名目で破壊されたり、高速道路やバイパスのルートとなったり、

あるいは飛行場となって真っ先に姿を消していくのです。生息地である草原がな

くなればそこに棲むチョウや様々な動植物が姿を消すことになります。

 薬剤散布によって衰亡したと考えられる例も指摘されています。例えば、前述

の青森県のオオルリシジミの場合、弘前市周辺のリンゴ園での農薬散布や、旧青

森空港周辺での農薬の空中散布の影響が大きかったのではないかと考えられてい

ます。

 農業形態の変化もまた、草原性のチョウの衰亡に非常に大きな影響を与えてい

ると考えられています。ご存じのように、日本のように降水量が多く、気温も高

い地域では、草原を放置しておくと遷移が進んで、草原は次第に樹林(森林)へ

と変化していきます。しかし、草原性のチョウは森林には棲めませんから、ちか

くを探せばどこかに草原があるような環境でなければ生き続けることはできませ

ん。自然状態でそのような環境があったとすれば、それは例えば氾濫を繰り返す

河川の周辺や活発な活動を続ける火山の周辺、厳しい環境のため森林ができにく

い高山や海岸近くなどでしょう。しかし、人間の手によって自然環境は改変され

ています。その改変によって、大きなダメージを受ける生物がいる一方で、利益

を享受してきた生物もいる訳です。現在、衰亡が問題となっている草原性のチョ

ウの中には、最近まで人間の手によって維持されてきた草原を生活の場としてき

たチョウが多く含まれていると考えられます。例えば、オオウラギンヒョウモン

などは、背丈の低いシバ草原を主な生活の場としてきたチョウだと考えられてい

ます。しかし、シバ草原が維持されるためには、野焼きをしたり、牛馬を放牧し

たりして、遷移の進行を止める必要があります。つまり、オオウラギンヒョウモ

ンの衰亡は、近年の農業形態の変化に伴い、野焼きや放牧があまり行われなくな

ったことと無関係ではないと考えられています。同じようなことは、ゴマシジミ

やオオルリシジミ、チャマダラセセリなどでも指摘されています。



 人間が手を加えることによって滅んでいく生物もいる一方で、人間が手を加え

なくなることで滅んでいく生物もいるのだということを、私たちは肝に銘じてお

く必要があるのです。



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■新刊紹介

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○巣瀬 司・広渡俊哉・大原昌宏 編 1999

 昆虫類の多様性保護のための重要地域 第1集

 日本昆虫学会自然保護委員会,東京。

 106pp. \2,000

 北海道(サロベツ原野など6地域)、東北(尾駮・鷹架沼ならびに周辺湿地な

 ど5地域)、関東(渡良瀬遊水地など7地域)、東海(朝霧高原など6地域)、

 信越(氷見市宮田地区ため池群など5地域)、近畿(中池見湿地など9地域)、

 中国(久松山など5地域)、四国(吉野川・勝浦川河口地区など4地域)、九

 州(英彦山など6地域)が選定され、地図と共に、地域の概要、選定理

 由、保護のありかた、選定地域の現在の取り扱いなどが簡単に述べられていま

 す。読んでいて楽しいものではありませんが、当該地域に関心のある方には役

 立つかもしれません。欲をいえば、もう少し詳細な解説が欲しいところですが、

 それは、関心のある人が自分で調べなさい。。。ということなのでしょう。一

 般向けに作られた本ではないので、仕方のないところかもしれません。

 本書は 3月末日締切で予約販売されたものですが、多少多めに印刷してあるそ

 うです。一般書店等では入手できませんが、

   南陽堂書店(〒060-0808 札幌市北区北8条西5丁目 FAX 011-716-5562)

 では扱うようです。もし、南陽堂書店で入手できない場合は

   藤井 恒(pen@mvd.biglobe.ne.jp)

 までメールでお問い合せください。



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■書籍紹介(新刊以外)

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○石井 実 著 1998

 チョウの庭

 森の新聞17, フレーベル館,東京。

 ISBN 4-577-01855-1

 290pp. \1,500+税。

 子ども向けに作られた「チョウの庭づくり」の本。How toものではなく、読み

 物として楽しむ本です。小学生向け。



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■くりえいとPEN:更新情報

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○くりえいとPEN http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/

 チョウや昆虫、写真などの総合情報ページです。



○季節の花情報 http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/season-hana100.htm

 京都のお勧め花スポット公開中。



○お勧めの本のページ http://japan-inter.net/book/

 Nature Newsで紹介した本を中心に、★★★以上の本を紹介します。



○津軽昆虫同好会の紹介ページ。津昆関連の本の紹介ページもできました。

                 http://japan-inter.net/insect/tsu-kon/



○ホームページの設置サービスを始めました。無料サービスもあります。

                http://japan-inter.net/information000.htm



○子ども向けの質問コーナー「質問ひろば」  http://japan-inter.net/kids/

 ネーチャー関連の質問ができます。大人も利用できますよ。



           >>>>>>>>>>>>見・に・来・て・ね  (^^)/



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■お知らせ

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○情報提供・ご投稿をお待ちしています。

 Nature News では、読者のみなさまからの情報提供やご投稿をお待ちしていま

す。ネイチャー関連の情報なら何でもOK・・・季節の生き物情報や新刊・CD

・パソコンソフト・ビデオの情報(宣伝)、素敵なネーチャー関連グッズの紹介

(宣伝)、ネーチャー関連のホームページの紹介(宣伝)、自然や環境について

のご意見など、何でもお寄せ下さい。

 なお、写真(画像)や音声も紹介されたい場合は、ホームページの方でご紹介

することも可能です。

 ただし、営業行為に該当するものは、ホームページへの掲載が有料となる場合

もありますので、ご相談ください。



○Nature News に掲載されている情報のご利用は、利用者の責任でお願いします。

 Nature News に掲載された情報を利用された結果、何らかの損害を被られても、

 くりえいとPENでは責任はとりませんので、予めご承知おき下さい。



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*    をご覧ください。                       *

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■編集後記

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○関西ではソメイヨシノは終わり、サトザクラやツツジの季節になりました。サ

 トザクラでは、「大阪・造幣局の通り抜け」や「京都・仁和寺の御室桜」が見

 頃になっています。ツツジは、「京都・高雄」などがお勧めです。「京都・長

 岡天神のキリシマツツジ」は今度の日曜日あたりに見頃になると思います。

 

○日曜・月曜と京都府北部や丹後半島へ、花や虫を見に出かけました。丹後半島

 では、今年は例年より1週間ほど早くナシの花が咲いていました。平地の桜は

 こちらでも散り始めていまいた。



○京都府日吉町ではムカシトンボの羽化も観察することができました。今年は、

 トンボもまじめにやるつもりです。



○今週から、また仕事で広島や岡山へも毎週出かけますので、中国地方の情報も

 お届けできるかと思います。



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= 電子メールマガジン Nature News No.10 (1999/04/14 発行)     =

= 発 行:くりえいとPEN http://www2h.biglobe.ne.jp/~pen/     =

= 編 集:藤井 恒(Hisashi FUJII)                  =

=                                   =

=  記事の転載を希望される場合は、下記までメールでお問い合せください。 =

=     お問い合せは メールで info@japan-inter.net  まで。    =

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